国を滅ぼすTPP 推進者の巧妙な手口・ダマしの数々1/2【中野剛志】



 (内容要約)TPPは東日本大震災以降、ほとんど語られなくなった。常識的な人は、東日本大震災であれだけ被害を受けたのだから、農林水産業をこれ以上痛めつけることはないだろうと思っているが、残念ながら間違っている。どうしてかというとTPP推進したい人達には常識がない。推進者や日経、読売などのマスコミは、被災したからこそTPPと水面下で動いてきた。世の中にはTPP反対の本が多く出ているのだが、完全にガン無視されているという状況である。


 国際面からみると、TPPは完全にアメリカの戦略。アメリカのターゲットは完全に日本。いまアメリカ経済はひどい状況にある。小さな政府を求めるティーパーティの人々が勢力を握ってしまって、不景気にもかかわらず財政出動による内需拡大ができない。内需に期待出来ないということは、外需を取りにいくしかない。だからTPP要請はおそらく今まで以上に強まっている。


 また、オーストラリアやニュージーランドアメリカに乳製品を輸出したいのだが、アメリカの農業団体は案外閉鎖的で、市場開放に反対である。そこでディフェンスの弱い日本を狙おうとする。アメリカ、オーストラリア、ニュージーランドという国々が、日本のTPP参加を熱望するという状況に陥ってしまった。


 次に国内面。野田政権は、これまで民主党がトラブったアメリカとの関係および経団連との関係を重視するとブチ上げている。アメリカとの関係でいうと、普天間の問題を解決することはできないので、TPPで協力するということになってしまう。経団連との関係でいうと、原発維持、法人税減税、TPP推進の重点課題のうち、原発法人税減税は難しい。消去法の結果、TPP推進ということになってしまう。しかも11月にAPECハワイ会合があるので、かなり逼迫している。


 そもそもなぜTPPなのか。TPPは外需を取りにいくという話だった。少子高齢化で日本は成長しない。だから内需では駄目なんだという。今回被災した東北地方は少子高齢化と過疎の地域が多い。少子高齢化だから外需を取りにいくというのであれば、東北地方なんて復興しても仕方がないということになる。前原政調会長は「第1次産業の割合は1.5%、それを守るために大部分の産業が犠牲になっていいのか」と言っているが、東北の農業はもっと小さい。だから復興しなくていい、そういう論理になってしまっている。


 またTPP推進論者は、かつて構造改革を言っていた人が多い。竹中平蔵大田弘子などがそう。この人たちは、成長部門を伸ばし、そうでないところを切り捨てろ、選択と集中だと言っていた。東北は稼ぎ頭ではないわけだから、復興なんてしなくていいと思っている。痛みを感じていない。


 今東北の人々は被災して農地を手放さなくてはならなくなっている。これを復興するには多額の借金と手間が必要。しかし、TPPに入るかもしれないということになれば、競争が激化するのが目に見えているので、だれが復興しようと思うだろうか。現に宮崎の口蹄疫のときは、TPPに入るということを聞いて、やっても無駄かということで農業をやめた人がいると聞いている。TPP推進論者はそれが狙い。小規模な農家が土地を手放してくれれば、農業を大規模化できる。TPPの抵抗勢力が消える。だから被災したからTPPと、彼らは勢いづいている。


 また日本も外需頼みなので、健全財政論者もTPPに賛成である。ところが円高なので、外需を取るのは無理がある。また、震災からかなりたっているというのに、一次補正はたった1兆円、2次補正もたった2兆円、合計3兆円しか出していない。これだけのデフレ、不景気なら、震災がなくても少ない額である。震災対応としての3兆円と言う額は、とても少ない。正直に言ったらいい。「お金がもったいない」と。「少子高齢化で過疎化した東北の農地を復興してもしようがない」と。そう思っているから、額が少ないと声をあげて批判をしないのだ。しかもこの補正予算を作った責任者が総理大臣である(その2へ)。


「10・16新宿 TPP拒否国民デモ 実施いたします」http://tpp-negative.seesaa.net/article/230328012.html
「TPPを考える国民会議http://tpp.main.jp/home/