三浦展「郊外はこれからどうなる−東京住宅地開発秘話」中公新書ラクレ



 山下祐介「限界集落の真実」は、過疎の集落の直面する問題を深く考察しているが、本書が扱っているのは都市郊外。限界集落と都市郊外、置かれている状況はまったく違うのに、共通の問題が横たわっていることにオイラは気づかされる。
 共通の問題とは「高齢化」である。
 郊外でも高齢化が進行しているという。言われてはじめてオイラはなるほどと思う。背景にあるのは人口の都心集中。都心部から郊外への転出数は、実は減っている。


 どうして人口は都心に集中するのか。郊外に住む大きな理由、それは子供なのだそうだ。子供がいる家族は、成員が多いので、広い家が必要なのだ。だから家族は郊外に住む。
 しかし、いまや子供の数は減少傾向。単身家庭も多い。おかげで郊外には、若い人たち流入してこない。だから、ニュータウンはオールドタウンになるというワケ。


 「高齢化」にはマイナスのイメージがつきまとうが、ただ本書は「高齢化」をマイナスとはとらえていない。むしろ30代40代の男性がほとんどが仕事に出かけ、昼間は主婦と子どもしか街に残ってないような街と比べると、よほど健全と本書は言う。確かに定年後の男性が昼間に活動し、顔を合わせた方が、地域の共同体は維持されやすいし、交流も深まると言えるだろう。


 本書は公開講座の内容をまとめたもので、表・地図などが豊富で、オイラのように、東京の郊外に土地勘のないものにもわかりやすい。明治以降の東京の発展のプロセスも興味深く読んだ。それにしても、三浦展言うところの第四山の手論は、1980年代のパルコのマーケティングを起点としているというのも、バブル期からの時代の変遷を感じさせて興味深かった。