演劇部に行く


 勤務校の演劇部の指導。今年度は週1−2回のペースで稽古につきあっている。


 「またあしたっ」県大会公演まで、あと4週間。10月28日は「立ち稽古」初日。
 椅子や机をセットに見立てて、役者には自由に動いてもらう。
 段取りに関する指示は、ほとんど出さなかった。
 段取りを覚えることより、先にやるべきことがある、そう信じるからだ。


 コメディを演じることに、自覚的でない部員にオイラは言った。


 この台本のどこが面白い?
 どんなふうに面白い?
 その面白さを表現するために、どんな工夫をしている?


 すぐれたコメディエンヌなら、
 何げないセリフの一言一言、何げない仕草の一言一言に
 「おかしさ」を見い出し、おかしみをこめることができるだろう。


 だから「どこが面白い?」に対する理想的な回答は「すべて」である。


 どこが面白いか答えられない役者に、オイラは言った。


 あなたはとても真面目で普通な常識人である。
 だからこそ、自分の感覚に沿って発せられたセリフや仕草は
 まったく「面白くない」と自覚すべきだ。


 自分の感覚の枠内で演技をしている限り、面白くなることはない。
 とりあえず、すべてのセリフの言い方を、
 今とは別の言い方で言おう。うまく読もうとするな。
 ひとりで演技をするな。企てを捨てよ。
 相手のセリフに身をゆだねよ。エモーションに身をまかせよ。
 もっとも大切なのはリラックスだ。子供に戻れ。


 その役者は、その日の自分のFACEBOOOKのページにこう書いた。

 
 「悔しい!悔しい!悔しい!
 できん自分に腹が立つ。
 発想力が乏しいことが悔しい。
 思いきれないのが悔しい。
 ブッ飛びたいのにできないのが悔しい。
 だから、何がなんでも11月23日までにできるようになってやる!
 見とけよ!こんちくしょー!!」


 まっすぐさとひたむきさに、オイラは無性に嬉しくなった。
 彼女は、不完全だからこそ完璧なのだ。
 「いっぱいいっぱい」がゆえに生じる
 芝居と向かい合う際のまっすぐさとひたむきさが、
 舞台の化学反応をうながし、人の心を打つのだ。


 そうした「ひたむきさ」が凝縮されたような11月23日の公演でありますように。
 オイラはそう願っている。


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