誰の利益?


 西コロラドに住むアビゲイルエバンスという4歳の女の子が「オバマロムニーもうんざり」と、泣きじゃくる姿が報道され、大統領選の中傷合戦に嫌気がさしたアメリカ国民の共感を呼んでいるというニュースが流れた。


 アメリカの大統領選挙は接戦だと伝えられているが、そうではない。明らかにオバマ優位である。なぜ「接戦」という報道がなされるのかというと、両陣営のコマーシャルによる中傷合戦により、メディアは莫大な利益を得ているからだ。メディアが接戦を演出することによって、コマーシャルの数が増え、視聴率もあがる。「接戦」は、メディアにとって利益があるのだ。



 一方、日本では、田中文部科学相によって、3大学の四年制化が「不認可」とされた問題について、秋田公立美術工芸短大の樋田豊次郎学長(62)のコメントが取り上げられている。


 「学びたいと思っている人たちのチャンスを奪ったことに一番怒りを覚える」


 受験生感情を盾にした「利害関係者筆頭」の学長のコメントを、そのまま報道するメディアの姿勢に違和感を覚える。


 大学は余っている。この20年間で、受験者数がほぼ半分に減少したのに、大学は1.5倍に増えた。私立大学等経常費補助金は3000億円以上である。大学は文科省の有力な天下り先でもある。そうした現状に対する問題意識を棚上げにして、ことさら受験生感情に訴えるのはナイーブにすぎる。


 オイラはどうしても、この報道は、誰に利益があるのだろうと考えてしまう


「チャンス奪ったことに怒り」…公立美大不認可
 http://www.yomiuri.co.jp/e-japan/akita/news/20121104-OYT8T00736.htm


 田中文部科学相によって、秋田公立美術大学秋田市)への4年制化が「不認可」とされた秋田公立美術工芸短大。初代学長予定者である同短大の樋田豊次郎学長(62)は4日、同短大で記者会見し、「本当に心苦しい。学びたいと思っている人たちのチャンスを奪ったことに一番怒りを覚える」と憤りをあらわにし、不認可を撤回するよう訴えた。


 樋田学長によると、秋田市の大学設置準備室には4日正午までに、入学を希望していた学生や保護者からメールや電話が21件寄せられ、そのうち約半数が田中文科相の対応を批判する内容だったという。


 「地元に残りたいので第1志望で考えていた。どうすればいいのかわからない」といった困惑や不安の声が多く、「理不尽な決定には、専門家の意見を聞きながら断固対抗してほしい。頑張ってください」といった声もあったという。


 同短大は近く、3年次編入を希望していた学内の学生を対象に説明会を開き、編入可能な他の大学を紹介したり、就職など進路に変更がないか確認したりする。


 一方、4日は本来、認可後の美術大のオープンキャンパスが開かれる予定で、県内外から156人の参加申し込みがあった。秋田市は3日までに電話やメールで中止を連絡したが、既に宿泊施設などを予約していた遠方の学生や保護者6組が施設見学を希望。4日、市職員の案内で実習棟や図書館を見学した。


 広島市から訪れた高校3年の女子生徒(18)は、同大が第1志望だったといい、「4年制化が(志望の)決め手だった。今日も楽しみにしていたのに残念。(不認可で)進路をどうするかは全く決まっていない」と肩を落としていた。


(2012年11月5日 読売新聞)