女性セブン2012年11月22日号「ママ友が遭遇した「部落差別」問題」ほか



 「週刊朝日」10月26日号に掲載された「ハシシタ 奴の本性」と橋下徹大阪市長をめぐる件からはじまり、部落解放同盟中央本部・組坂繁之中央執行委員長のコメント、差別に遭遇した人々の実体験コメント、部落差別が生まれた歴史的背景、差別問題に対する東京と大阪、世代間ギャップ、村崎太郎栗原美和子夫妻のインタビュウなど、部落問題に関する特集7ページ(といってもタイトルと見出しで2ページ見開きに使っており、実質5ページ)。


 芸能情報や生活情報、皇室報道などにまじって、硬派な本記事が掲載されている様子が女性誌的。ただ記事そのものは教科書な類型に沿っていて、型通りの啓発的内容。行政の発行するパンフレットなどと共通する内容で、差別問題に理解の深い人にとっては既知の内容だし、部落差別に関心を持たない人々にとっては、思わず読ませるといった魅力に欠ける。


 部落問題についてメディアがコミットすると、ありふれた、型にハマった話型になってしまう場合が多い。女性セブンの記事も例外ではない。問題が複雑で、デリケートであると思われており、週刊誌の得意なセンセーショナリズムでは手がけにくいという面もあるのだろう。こうした記事が掲載されること自体は意義があるが、少々食い足りない。読ませるための「芸」がほしい。


 本誌を購入したのは、週刊朝日の件について、部落解放同盟中央本部・組坂繁之中央執行委員長のコメントが掲載されていたからだ。ただし、コメント自体は通りいっぺんのありふれた内容。取材陣には、もう少し踏ん張ってほしかった。オイラが一番知りたかったのは、この問題に、部落解放同盟は今後どう関与するかということだ。部落解放同盟が沈黙しているのは「相手が朝日だから」「橋下だから」という批判について、組坂氏はどう考えているのか、ということである。


 ただ「部落解放同盟が沈黙している」というのは誤解である。10月22日付で、部落解放同盟中央本部から、『週刊朝日』(2012年10月26日号)掲載記事「ハシシタ 奴の本性」に対する抗議文が出されている。宛先は、朝日新聞出版代表取締役社長、『週刊朝日』編集長・発行人。内容はこちらで読める。http://www.bll.gr.jp/guide-seimei20121022.html橋下徹氏の政策や政治手法を批判する記事ではなく、被差別部落出身を暴く調査をおこなうことを宣言して書かれた明確な差別記事」とはっきりと書かれており、部落解放同盟のスタンスが分かる。



 週刊朝日の対応については、進展があった。11月9日付で、第三者機関「報道と人権委員会」の見解、代表取締役社長と、佐野眞一氏のコメントが発表されている。企画から掲載後の対応に至る経緯と問題点が丁寧に整理されており、長文だが一読に値する。今回の事件を把握するための必須文献である。http://publications2.asahi.com/index.html







 関連エントリ


 ■[雑誌]週刊朝日2012年10月26日号「ハシシタ 奴の本性」http://d.hatena.ne.jp/furuta01/20121020


 ■[メディア]週刊朝日橋下徹大阪市長をめぐる連載記事「ハシシタ 奴の本性」と、一連の出来事についてhttp://d.hatena.ne.jp/furuta01/20121027/1351327681
 

 ■[メディア]部落解放同盟中央本部「「週刊新潮」(2011年11月3日号)の掲載記事および新聞広告に関する抗議文」解放新聞2011年11月28日 http://d.hatena.ne.jp/furuta01/20111127/1322472725