成毛眞「面白い本」岩波新書:レビュウ編


面白い本 (岩波新書)

面白い本 (岩波新書)


 タイトル通り、面白い本についての本である。


 書評サイトHONZの代表である成毛眞氏が、面白いと推奨するノンフィクションが100冊、並べられている。筆者の文章が分かりやすくて的を得ているせいか、紹介されている本がどれもとても面白そうだ。オイラも今はフィクションよりもノンフィクションを読むので、筆者の守備範囲はオイラのそれと重なる。それでも未読の本がほとんどだ。早速何冊か購入する。その結果、読みたい本が増えてちょっと困った状態になった。そういえば、同じ著者の本に「本は10冊同時に読め!」というのがあったっけ(でもオイラ、こういうのは得意である)。


 筆者はノンフィクションの魅力を次のような言葉で説明する。ノンフィクションで描かれるのは、おおむね「極端な生き方や考え方」。「野糞をすることこそがエコロジーであるという極端な世界観を持つ人を知ったり、数学の難問ポアンカレ予想の証明の舞台裏を知ったところで、自分の日常生活には何の影響もないし、何の意味も持たない」。しかし、それを知ることで、「自分が世界のどこに位置しているかはわかる」「自分という小さな個は、知の歴史という巨人の肩に乗っているだけの存在なのだ。その「巨人」と対話をすること。それが私にとっての読書なのかも知れない」


 ノンフィクションは、自分の知らない世界を、大きく広げてくれる。紹介を読むだけでも、ビックリさせられること請け合いであり、本書は知の世界への格好の案内書になっている。知的冒険の旅に出かける高揚感を覚えている自分に気づく。筆者は言う。「読者の皆さんが10年かけて読むに足る本がつまっている」「すべて購入すると20万円になる」20万と言えばおおごとだが、年にしたら2万。平均を引きあげでいる1万円近い数冊を除くと、出費はもっと下がる。知の世界へのキップ代と思えば安いものだろう。


 それにしても、この人はいったい何冊の本を読んでいるのだろう。100冊の本を紹介するためには、その何十倍の本を読まないとならない。紹介文も、そのエッセンスを凝縮させて簡潔で的確。読もうとさせるブックガイドである。少々岩波書店の本の紹介が多いのはご愛嬌だが(笑)。




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