第38回四国地区高等学校演劇研究大会


 松山のひめぎんホールで行われた高校演劇の四国大会に参加した。以下、観劇した上演校の簡単な感想を、速報代わりにまとめてみた。ただし最初の上演1/松山東雲高「リトル・ウィメン〜きよちゃんと私の若草物語・梅干しを探して〜」は、オイラの到着が遅れ間に合わず見逃した。スミマセン。あと、会場には、日本工学院の堀江先生とともに、なんと全国高校演劇協議会事務局長の阿部順先生の姿が。


 上演2/鳴門高「その街の高校生」。阪神淡路大震災で亡くなった高校生の幽霊と、生き残り年を重ね教師になった女性の交流。これは人が執着から解き放たれていくプロセスを描いた作品なのだ、巡礼の場面でオイラは気付く。学生寮の高校生や教師の雰囲気が巧妙。素朴さを生かした役作りがうまい。歌や朗読などで、やや情緒に流れた後半が惜しい。


 上演3/土佐女子高「雨上がりの自由律」取り壊す予定の放課後児童クラブで思い出にひたる20代女性4人。上品で手の込んだ舞台美術、雰囲気のいい衣装、書かれていない便せんなど小道具の使い方も巧妙。チャーミングな芝居を作ろうという意思が感じられる。欲を言えば女性4人の「今」のドラマも見たい。


 上演4/丸亀高「鬼ぃさんといっしょ」小劇場的で一見人を食った悪ふざけに見える展開、その中に土着と現代、善意と悪意など、物事の二面性を巧妙に浮かび上がらせた。説明的にならないように観客の想像力をかきたてる仕掛けがとても演劇的でセンス良し。何もない舞台。いい意味でふざけた衣装。役者も面白い。丸亀高の新しいスタイルの結実を感じた。


 上演5/川之江高「読書感想文戦争」国語教師が劣等生に読書感想文を書かせることで、互いに成長していく姿を描く。ドラマの構成が巧みで安定感がある。それを支える役者のセリフも達者。ただその饒舌さと引き換えに、落第生が言語能力の高い生徒に見える。身体のリアリティが立ち上がればさらにGOOD。


 上演6/富東高羽ノ浦「夜帰」文化祭前夜教室に居合わせた不器用な高校生たちの葛藤。立体的で完成度の高いセット、夜の照明のトーンなど、細部にまで気を配った作り。とても印象的で独創的な鉄道模型の影。丁寧で繊細な表現がテキストの内容をよく支えている。今回は少々息苦しい雰囲気が強かったように思う。


 上演7/高知追手前高「銀河鉄道の夜宮沢賢治の同題作品を脚色。小説のテキスト化、背景の星球、白い多角柱による舞台転換、想像力をかきたてるピアノやバイオリンによる効果音伴奏など、よく吟味されたオリジナルな表現に好感が持てる。笑いなどが少々不自然なのが惜しい。


 上演8/観音寺第一高「問題の無い私たち」コンクールでどんな作品を上演したいのか考える演劇部員たち。高校生らしさや未熟さを逆手に取ってヌケヌケとテーマを語り叫び熱っぽくテンション高く説明的にセリフを読む「したたかな」問題作。「これも顧問がつくったんですけれどね」というラストのセリフに「してやられた」。


 上演9/松山東高「夕暮れに子犬を拾う」いじめられている同級生を守ろうとする仲間たちの挫折。安定し高度に計算されたセリフ、台本の意図を適切に読み取り、よく気持ちの乗った役者の奏でるラストも忘れがたい。今さらながら高校生の友人関係を社会的な問題と二重写しする構造もうまい。


 鴻上氏の講評でもっとも強調されていたのは「リラックスするためには、与えられた状況をリアルに想像して、いかに生きているのか考えること」。他に「自分の役の具体的な目的を明らかにする。動機は演じられない」「目的と障害がスパークするサマを行動で表現することができれば面白い」と、極めて重要な指摘ばかりだったが、演劇的な考え方に慣れていない高校生には少々難しかったかもしれない。


 結果は以下のとおり。最優秀 松山東高「夕暮れに子犬を拾う」、優秀(全国高演協会長賞・2位)観音寺第一高「問題の無い私たち」、優秀(四国高演協会長賞・3位)富東高羽ノ浦校「夜帰」。創作脚本賞 「鬼ぃさんといっしょ」丸高演劇部と豊島了子。松山東高、観音寺第一高が夏の全国へ(来年度は1校増枠の年です)、富東羽ノ浦校が春の全国へ(おそらく)。


 上演校の皆さん、愛媛の皆さまをはじめ、運営に関わられたすべての皆さん、お疲れ様でした。そしていろいろありがとうございました。