週刊ダイヤモンド2011年12月10日号「悩み多き大学教育の現場」


週刊 ダイヤモンド 2011年 12/10号 [雑誌]

週刊 ダイヤモンド 2011年 12/10号 [雑誌]


 「リメディアル教育」である。リメディアル教育とは、基礎学力の不足している学生に対して行われる、いわゆる「補習教育」のこと。オイラ、この記事を読むまで、リメディアル教育の実情を正しく理解していなかった。週刊ダイヤモンドの記事を参考に、リメディアル教育について紹介したい。


 取り上げられているのは、千葉県柏市の学生数463人の日本橋学館大学。この大学が知られるようになったのは、ネット掲示板2ちゃんねる」で、「最高学府とは思えない低レベルの授業を行う大学」として、大学HPで公開していたシラバスが晒されたのがきっかけ。大学のHPのアクセス数が、10月のピーク時には、一気に2万4千件にまで跳ねあがった。週刊誌には「本当にあった「バカ田大学」」という見出しが踊った。


 注目を浴びた選択科目名は「基礎力リテラシー」。国語では「原稿用紙の使い方」、数学は「整数の計算」から。英語は「アルファベットの書き方」「読み方」。「確かにシラバスを見る限り、「小中学生レベルの授業に単位を与える必要はあるのか」というネットの批判は、きわめて常識的な反応」だ。テキストには、中学生用のテキストを使うこともあるという。


 リメディアル教育に正面から取り組む日本橋学館大


 同大学の横山幸三学長は言う。「批判は甘んじて受けるが。一方で全国の大学からは、激励のメールや手紙が寄せられている」「…本学の「基礎力リテラシー」のようなリメディアル教育は現在、公表されていないだけで、難関校を含めたほとんどの大学で行われている」
 「…本学は、授業の詳細をあえて公にしている。現実の学生と向き合い、リメディアル教育に真正面から取り組む姿勢が、本学の特色であり、生き残るための術だと考えるからだ」(60・61ページ)


 『みのもんたの 朝ズバッ!』 平成23年11月22日(火)放送分では、日本橋学館大学のリメディアル教育が取り上げられた。
 「(授業内容が小学生レベルだと聞いて)みのもんたやコメンテーターからは一瞬ビックリしたような声が上がっていましたが、すぐにアナウンサーから「ところが、驚くべきことに就職率は77.5%と早稲田大学より高いのです。」また、小林哲夫氏(教育評論家)のコメントとして「教育の目的が明確。“救済型大学”というカタチはこれからの大学としてはアリ。」http://www.nihonbashi.ac.jp/daigaku/asa_zuba.php


 学力低下は教育政策の失敗のツケ


 オイラは大学生の学力低下を笑えない。高校も同様だからである。狭い意味での高校生の学力は、学習指導要領が変更になってから、大幅に低下した。また、常識を知らない、コミュニケーションができない、日本語がまともに使えない、そうした者が高校生の中に確実に増えた。そうした高校生を大学に送りこんでいるわけで、オイラもまた大学生の学力低下の責任の一端をかついでいることに変わりはない。
 山田昌弘は「希望格差社会」(筑摩書房、2004)の中で、戦後安定的な日本社会を形作っていた「人生のパイプライン」に穴が開き、将来に希望が持てない不安定な社会になっていることを指摘した。学力の保障という点でも同様で、中学も高校も大学も、基礎基本の部分ですでに、大量の落ちこぼれを作ってしまっているのが現状である。


 オイラの勤務する進学校と呼ばれるような高校では、あるレベルまでの生徒を、あるレベルまでの大学に入学させるための学力保障(補習など)には熱心でも、「落ちこぼれ」に対する指導は十分とは言えない。おざなりの補講などをしておしまい、という場合が多いのではないか。
 落ちこぼれた高校生は、本人の責任だから、バシバシ落第にして留年させればいいではないかという意見もあろうが、「穴の開いたパイプライン」を放置しておけば、社会は確実に悪化し不安定になる。穴からこぼれた水を救いあげる作業を、誰かがしないとならない。そうした機関が今の段階では明確に存在しないので、結局は大学がやっている。戦後の教育システムが崩壊し、教育政策の失敗のツケが大学に押し付けられている。


 本来なら、こうした問題にこそ、人的リソースを投入して改善に取り組むべきだと思う。だが、こうした教育がなおざりになるのは、こうした教え直しをする余裕が現場にはないことが大きな理由である。手間がかかる。部活に会議に研修に生徒指導、保護者の対応と、多忙感に追われている中学高校教員にとって、やろうとしてもできないのが、多くの現場の実情なのではないか。日本橋学館大学は、ある意味先進的なのである。


 リメディアル教育を制度化して高校にも導入できないか?

 
 オイラは提案したい。大学だけでなく、高校において、学力的に問題のある生徒、コミュニケーション能力に問題のある生徒にも、学力を保障する制度を導入するべきである。そのために人員を配置する。予算措置・法的措置が必要だとオイラは断固として思う。


 具体的には、学力的に不十分と思われる生徒には、リメディアル講座を必修とする。赤点を取った生徒は、決められた講座を履修しないと、卒業認定されないぐらいの方がいい。かつ十分な時間数を確保し、きちんとしたカリキュラムを作る。単に赤点生徒の懲罰的措置や、学校の「やりました」というアリバイ作りではなく、社会で通用する人間を育成するという視点に立って、制度として導入する。


 政治家の方で、どなたか関心のある方はいらっしゃいませんか?


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