SAPIO/2013年4月号「それでも体罰はなくならない」



 アメリカ合衆国では、なんと年間22万人の小中高校生が体罰を受けている、と書かれた在米ジャーナリストの武末幸繁氏の記事が、よく整理されてわかりやすいと思う。


 わが国では、体罰事件は、なぜか大々的に報道されることが多い。ニッポンの常識に浸かっている方には信じられないかも知れないが、世界には体罰を認めている国や地域も多い。教育や論壇では、当たり前のように流通している「体罰は絶対ダメ」という言説も、学校の強制性や権威性を毛嫌いする「反学校イデオロギー」を補強するための言説の一種であるようにオイラは思う。それが証拠に、学校の体罰は問題になるが、親の体罰はわが国ではほとんど問題にならない。


 オイラは学校の体罰を容認したいがためにこんなことを書いているのではない。よりラジカルに物事を考えたいがために、こんなことを書いているのである。


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 (以下引用)
 (前略)米国の学校では、生徒への懲罰としパドルで尻を叩くことは1960年代までごく普通に行われていた。現在では首都ワシントンとニューヨーク州など31州が体罰を禁じている(ただし私立まで禁止しているのは2州のみ)。


 体罰を容認しているのは前出のサウスカロライナ州など南部を中心とする19州。「臀部を3回まで」パドルで叩くことが認められているアラバマ州アレキサンダーシティ学校区では、小学生までは長さ約19cm×幅約9cm×厚さ約0.6cmのものを、中高生には長さ約33cm×幅約13cm×厚さ約1cmのものを使う、などパドルのサイズにまで厳密に定めている。しかし、これらの州でも体罰に納得しない親が訴訟を起こすことがある。


 (中略)現在、テキサス州ノースカロライナ州は保護者が個別に体罰を拒否できる制度を導入している。市町村や教育委員会レベルで独自に禁止しているところもある。米教育省によれば、米国での体罰は減少傾向にあり、体罰を受けた生徒の数は76年の年間約150万人から06年には同22万人になった。


 ジュネーブで設立された世界の体罰について調査している団体の12年版レポートによると、ドイツやフランスなど117ケ国が学校での体罰を禁じている。一方、英、米、オーストラリアなどでは一部に体罰容認論が厳然としてある。英語圏に多いのは英国の影響と言われる。鞭や杖などによる体罰が伝統的に行なわれてきた英国では87年、公立学校を対象に体罰禁止法が制定され、03年までの私立を含む全学校で体罰は禁止された。が、その後実施された教師へのアンケートでは、5人に一人が杖を使った体罰を認めるよう規定を戻してほしいと答えている。もちろん「全面禁止」は建前で、現実には体罰はあちこちで行われている。


 アジアはどうか。


 韓国では長ら「愛の鞭」として棒などによる体罰が容認されてきたが、10年にテコンドー部の中学3年生が体罰を苦に自殺したり、サッカー部の小学5年生が体罰を受け死亡する事件が起きた。昨年1月、ソウル市などが学校での体罰を禁止したが、親が同意すれば認められるという。その他、マレーシアやインドネシアなど一部の東南アジア諸国でも学校の体罰は禁止されていない。


 一方、家庭での体罰については、手段や方法を細かく定めているところもある。英国全土では「あざが残るほど」叩くことが禁じられており、特にスコットランドでは03年に鞭などの道具の使用が独自に禁止され、「平手打ちのみ」認められている。こうした規定は他にカナダなどに見られる。


 それに対し、学校、家庭に限らず子供へのあらゆる体罰を禁止している国はスウェーデンなど欧州を中心に現在33か国。近年増加しつつあるものの、アジアでは日本を含めてまだひとつもない(後略/引用終わり)。


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