「てなもんや三度笠」


てなもんや三度笠 [DVD]

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 古い人なら誰もが知っているテレビコメディ「てなもんや三度笠」は、1962年(昭和37年)から1968年(昭和43年)まで朝日放送製作・TBS系列で放送された。視聴率は最高64.8%(!)というから大人気番組である。吉本新喜劇などと同じく舞台の公開収録の形式で、関西弁の軽妙なギャグとユーモアが記憶に残っている。今回レビュウするのは、その映画版で、1963年公開のもの。舞台収録ではない。


 何といっても白木みのるがいい。この映画が作られた1963年当時、彼は30歳前後。身長約140cm、子どもに見える風貌にもかかわらず、セリフは達者で、役者としての押し出しには威厳すら感じられ、そのアンバランスさが不思議な新鮮さをかもし出している。藤田まことを泣きながら慕って抱きつく仕草などは、まるで本当の幼子のように見え絶品であった。馬面の藤田まことも異形の役者だが、白木みのると並んだら、普通の役者に見えて分が悪い。藤田まことがグッとよくなるのは、「必殺」以後、年齢を重ねて渋さが際立ってきてからだとオイラは思っている。


 大泉滉、平参平、夢路いとし喜味こいし大村崑芦屋小雁・雁之助、トニー谷茶川一郎堺駿二と、当時の東西の喜劇俳優が多数出演して、今見ると結構豪華な俳優陣。とくに当時吉本の大御所であった花菱アチャコが肝の座った清水次郎長を演じており、風格すら感じられる。個人的には、若き日の河内音頭鉄砲光三郎が、ゲストスター的扱いで出ていたのが時代を感じさせて興味深かった。


 関東の喜劇人もたくさん顔を見せているが、藤田まこと白木みのるは当然のこと、花菱アチャコをはじめ清水港の面々が、当然のようにコテコテの関西弁を喋るのを見てもわかるように、関西のお笑い文化の集大成といった観がある。時代劇の設定としてはムチャクチャで、芦屋雁之助扮する忍者が押しピンを撒いたりするのだが、これもコメディならではのご愛嬌。故香川登志緒大先生をはじめ、このシリーズを支える人たちの熱と勢いが感じられ、今見ても古さをそれほど感じさせない。