第27回高知県高等学校演劇祭 その10


上演11 高知丸の内高 楽静作「明日二人だけのロミ&ジュリを」


 3年の女子部員ふたりきりで「ロミオとジュリエット」を上演しようとする演劇部の、文化祭直前の3日間の様子を描く。多いセリフをこなしきれていなくて、少々危うさがあるが、セリフに力が抜けているのはよい。ニュートラルで見やすかった。またツッコミがうまく生きていて、会話が成立している。第一条件クリアである。


 逆に「ロミオとティボルトの対決」ひとり芝居の場面のように、動きのある場面や、情熱的なセリフのあるシーンは、少しつらい。今回の演劇祭を見ていると、動きをどうつけるのか、気持ちをどう入れるのかということについては、多くの演劇部で、どうしていいのかわからないままに、稽古がタイムアップになっている気がする。とにかく役者は立ち止まらず動いてみよう。気持ちの動くポイントで足を踏み出そう、体をほぐせば、気持ちもアップするし、テンションもあがる。感情解放にもつながる。気持ちの入ったセリフも言いやすくなる。恋の喜びやときめきがセリフから感じられるといい。


 本作は、登場人物が「ロミ&ジュリ」について語りながら、並行して男役の人のジェンダーの問題(「男になりたかった」)が隠されていて、終盤にかけてそれが明かされる。台本の構成は面白いと思う。ただ、セリフで心情を説明するように書かれているのが少々興ざめ。役者は説明にならないようにセリフを言わなければならない。「苦しい」と書かれているセリフを苦しそうに言うと、説明になる。


 舞台美術に関しては、平台や箱馬で作ったふたつの山が大きすぎる。たったふたりの役者の演劇部の練習風景にしては大がかりに過ぎる。それと衣装。女役の生成りの色目が地味で、平台むき出しの木の色と重なる。いつも同じ衣装だったが、素の部分と劇中劇の部分を服を着替えたり、衣装を羽織ったりして変化をつけたらいい。


 ラスト、台本にセリフを付け加えて幕を下ろした処理も秀逸。最後の場面のBGMである「月の光」がよく内容にマッチしていた。 また役者が正面を切っている時間が長い。お互いが向かい合って、セリフをかけあうところから始めてみよう。それが演劇の始まる第一歩である。