年休取り「のど自慢」に出演した教員を責める毎日新聞


 「「のど自慢」に出るために学校を休む教師」というアングルが面白いから、おそらくリークに反応して、ついつい載せたのだろうが、「手続き上は問題ない」し「生徒や保護者からの不満の声も届いていない」のに、何が問題だと言うのだろうか。


 体裁を考えれば問題かもしれない。だが信用失墜行為に該当するほどのことではない。それに部下は、気にしながら理由を校長に正直に話して相談している(もちろん有給取得の理由を使用者に伝える義務はない。念のため)。世間の批判を過剰に忖度して「駄目だ」と言ってしまったら(駄目だという管理職もいるだろうが)学校のおおらかさが失われる。それを天秤にかけて有給休暇の取得を許可したという、記事中の校長のコメントは極めて常識的で、オイラは好ましく思った。


 それに学年主任や教頭がピンチヒッターに立てば、保護者が文句を言うことは普通ない。昨年度、オイラは昨年、学年主任の立場で保護者懇談会のピンチヒッターに入ったが、何の問題もなかった。


 要するに、現実には何も問題がないのに、この記事だけがことさら取り上げて火をつけているわけである。もちろん一新聞社が独自の考え方を持つことは自由である。ではこのような記事、つまり「教師=聖職者」を強調し、教師の労働者としての基本的権利を制限する記事を載せることが、現在の閉塞した学校教育を好転させる一助になると考えるのなら、その論理の道筋を、毎日新聞にぜひ詳しくお教え願いたいものであるとオイラは思う。


公立中学教諭:のど自慢か、授業参観か…年休取り出演


毎日新聞 2014年05月17日 07時07分


 中部地方の公立中学校に勤務する50代女性教諭がNHKの番組「のど自慢」に出演するため、担任のクラスの授業参観と学校行事を欠席していたことが関係者への取材で分かった。年休を取っており手続き的に問題はないが、埼玉の県立高校で今春、自分の子どもの入学式に参加するため職場の入学式を欠席した教諭の行動を巡り、賛否の議論が巻き起こったばかり。仕事と休暇について、今回はどう考える?


 この教諭は今春に生放送された番組に出演するため、当日の授業参観やPTA総会、学年懇談会を欠席した。授業は別の教諭が担当した。事前に生徒や保護者への説明はなく、PTA総会では校長が「所用により欠席」と伝えたという。


 関係者によると、授業参観の日程は今年1月に決定。教諭はその後、年休を申請し、校長から許可を得ていた。校長は「本人は授業参観と重なったことを気にしながら年休を申し出た。あまり好ましくはないが、許可せず本人の教育への意欲をそぐより、許可した方が教育に身が入ると判断した」と説明。「生徒や保護者からの不満の声も届いていない」と話している。


 中学校がある自治体の教育委員会は「校長が許可したのであれば、それが適切な判断だったと理解している」としている。


 ▽評論家の赤塚行雄さんの話 手続き上は問題ないとはいえ、保護者が来校する大事な行事よりプライベートを優先するのは、教師の姿勢として疑問を抱かざるを得ない。教師である以上、自らの務めを自覚する必要がある。許可した校長の判断にも首をかしげる

 ▽労働問題に詳しい伊藤誠基弁護士の話 「教師は聖職」とする倫理的な議論は古くからあり、賛否も分かれるだろう。しかし、休暇は認められるべき権利であり、授業に支障のないよう配慮し、正式な手続きを経て上司から許可を得ているのであれば、法律上の問題はない。