斎藤孝「声に出して読みたい日本語」草思社


声に出して読みたい日本語

声に出して読みたい日本語


 ここで取り上げるのも何をいまさらの一冊だが、演劇部の部員さんに買わせて読ませることにしたので簡単にレビュウ。本書は、暗誦・朗誦を通じて、伝統的な文化の間に息づいていた感性や気概や美意識を「身体化」させようという試み。オイラは演劇部の顧問なので、演劇から「身体」へのアプローチを意識的に行っているが、国語教育にも「暗誦・朗誦」を通じて「身体」を自覚的に教育の主役に据えようとする試みがおこなわれていることを確認して、我が意を強くした。


 それにしても、講談、浪曲など、朗誦文化は衰退してしまった。戦後GHQにより禁止されたり、娯楽の多様化やテレビの影響もあって、しかたない部分はあるにせよ、うまく継承できなかったことが残念でならない。その点、本書には、歌舞伎(弁天娘女男白波)、大道芸(がまの油)、新国劇国定忠治)、浪曲森の石松)、詩吟(鞭声粛々〜など)、狂言(すゑひろがり)、経文(般若心経)などが取り上げられていることが、今見ると、ある意味新鮮。


 extinx0109yさん曰く、「消えゆくことばのアーカイブ」。なるほど。なるほど。
 章立てからは、斎藤孝の重視するポイントが分かる。こんな感じ。


1「腹から声を出す」
2「あこがれに浮き立つ」
3「リズム・テンポに乗る」
4「しみじみ味わう」
5「季節・情景を肌で感じる」
6「芯が通る・腰肚を据える」
7「身体に覚え込ませる・座右の銘
8「物語の世界に浸る」