安達誠司「円高の正体」光文社新書


円高の正体 (光文社新書)

円高の正体 (光文社新書)


 とても分かりやすい。オイラのような経済オンチでも、この本を読めば、円高がデフレを呼び、日本経済にとって悪影響をもたらしていることが理解できる。


 ただ、この本を読んでもよくわからないのは、日本銀行の姿勢。
「マネタリーベースを200兆円まで拡大すれば、日本経済は完全復活を遂げる」と筆者は言う。


 では、なぜ日本銀行は、マネタリーベースを拡大しないのか。
 マネタリーベースを拡大すれば、デフレや円高も解決なのではないか。

 
 森永卓郎氏も、別のところで、
 「なぜ日銀がここまで頑なに金融緩和を拒むのか。その理由はよく分からない」と書いている。


 ネットを検索してみても、出てくるのは、
 「日銀は財務省に対してコンプレックスがあり、金融緩和のために国債を購入することは「負け」と考えている」とか、
 「政策に成功しようが失敗しようが高い報酬を受け取るため、あらたな政策を実施するリスクを取りたがらない」とか、金融政策の本質とは何ら関係ない理由ばかり。


 ひいては、「日銀白川総裁が日本のデフレ不況脱出のための「金融緩和政策」を何もせずにデフレ不況を放置しているのは、「反米的」な民主党政権の日本を経済的に弱体化させて米国と中国の2国で世界支配する米国政府の戦略」という意見も。ここまで来ると、なんだかなあと思ってしまう。


 国家の運営の根幹に関わることなのに、こんなに分かりにくくていいのか、日銀。
 せめて、この本くらい日銀がわかりやすかったら、とオイラは思う。

 
 いやそもそも日銀が正しいなら、この本の主張は全面的に誤っているということになるが・・・・。


『「円高の正体」要旨』


円高は日本経済にとって悪である。
円高は、日米の予想インフレ率の差によってもたらされている。
■現在(2011年11月現在)の円高とデフレは、日銀のマネタリーベース供給量が28.8〜78.8兆円不足していることから起こっている。
■日米の予想インフレ率の差を縮小するためには、日本銀行が大規模な量的緩和政策(マネタリーベース拡大政策)を行うことが必要。
■日本経済復活のためには、日本銀行のマネタリーベース供給量を150兆円〜200兆円程度にする必要がある。
■マネタリーベースを150兆円まで拡大すれば円高は止まり、「1ドル=95円」までの円安局面が訪れ、日本経済はデフレから脱却し(その時のインフレ率は1.5%程度)、2%の経済成長が可能になる。
■マネタリーベースを200兆円まで拡大すれば、「1ドル=115円」までの円安局面が訪れ、日本経済はデフレから脱却し(その時のインフレ率は3%程度)、4%の名目経済成長が訪れ、日本経済は完全復活を遂げることができる。