NHK土曜ドラマ「男たちの旅路 第3部第2話「墓場の島」」
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「男たちの旅路」は、1976年から1982年にかけて、NHKで放映された、知る人ぞ知る傑作テレビドラマである。警備会社を舞台に、特攻隊の生き残りである吉岡司令補(鶴田浩二)と、若い世代の若い警備員(水谷豊、桃井かおり、柴俊夫など)との葛藤を描く。脚本山田太一。
オイラが若い時に見て、強い感銘を受け、おそらく生涯忘れることのできないテレビドラマである。さまざまな社会問題を前に、それぞれの世代の葛藤と対立、苦悩を鮮やかに描き出した。今のテレビドラマと比べると、じっくり練り上げられ、それぞれの役柄の個性が深く明確に描き分けられている。それでいて、コミカルで面白い。今ではほとんど見られなくなった、真面目で、安直に迎合することを嫌い、筋を通す鶴田浩二と、真面目に人生の問題に直面する若者が、そこにいた。
第3部第2話「墓場の島」の中のセリフ。人気歌手のマネージャーに「へなへなしたチビのガードマンはいらない」と理不尽にクビにされた水谷豊に、鶴田浩二扮する吉岡司令補は言う。
「へなへなしたチビだと。それでお前黙って帰ってきたのか。お前にミスはなかったんだな。それじゃあお前の力は分からんじゃないか。なぜお前は抗議しない。自分の力を見てから言ってくれと、なぜ頑張らなかった。なぜ言われるままに帰ってきた。この仕事はお前が希望したんだぞ。お前が希望して私が派遣したんだ。もう一度行ってこい。やれるかどうか見てからクビにしろと言ってこい。(強く)言ってくるんだ」
その姿を見て、前のエントリーに書いた、元都立三鷹高等学校校長の土肥信雄先生を思い出した。
「都教委という巨大組織に立ち向かうことに恐れはないですか」
そのたびに彼は答えた。
「ない。腹を決めたとたん、東大闘争の負い目が消えて嬉しかった。さっぱりしました」
(澤宮優「生徒がくれた「卒業証書」」38ページ)
生徒がくれた“卒業証書” ~ 元都立三鷹高校校長 土肥信雄のたたかい
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土肥は東大出身。彼が東大に入った頃は、「東大紛争」と呼ばれる学生運動が激しい時代だった。土肥は学生運動の考え方には共感していた。しかし、暴力は嫌だった。
「俺には勇気がなかったんだと思った。とても後ろめたかったし、そのことは仲間に対してずっと引きずっていた(澤宮優「生徒がくれた「卒業証書」)」
「男たちの旅路」の吉岡司令補は、特攻隊の生き残りという設定。彼は、戦争で仲間とともに死ねなかったことに負い目を感じて生きてきた。その「負い目」が、学生運動に参加できなかった土肥信雄と重なる。
一本筋を通す姿は清々しい。オイラもそうありたいと心から思う。