エンゾ・早川「間違いだらけの自転車選び」双葉社



 奥付を見ると、2008年6月発行とある。
 

 だいぶ前に読んで本棚に並べてあった本なのだが、整理をしながら、ふとカバーをはずすと、カバーの裏に、手書きで作者の言葉が、十字架の写真とともに印刷されていた。
 

  理由


 あなたはもうじゅうぶんやりました。
 ゆっくりお休みなさい。
 と、神さまがおっしゃってくださるまで、


 私には、
 たくさんのすべきことがあります。
 たくさんの書くべきことがあります。


 たくさんの伝えるべきことがあります。


 あなたはもうじゅうぶんやりました。
 ゆっくりお休みなさい。
 と、神さまがおっしゃってくださるまで、


 私は、
 かならずたくさんのことをやりつづけます。
 かならずたくさんのことを書きつづけます。
 かならずたくさんのことを伝えつづけます。

  
 それが、
 私が生きていられる
 たったひとつの理由なのですから。


 あなたはもうじゅうぶんやりました。
 ゆっくりお休みなさい。
 と、神さまがおっしゃってくださるまで、


 けっして私は休みません。


       エンゾ・早川


 オイラはキリスト教徒ではないが、そうした使命感は共感できるし、また筆者の使命感を、普通の人がまず見ないところに書き残しておくという粋な計らいに、オイラはすっかり嬉しくなってしまったのだった。
 本書は、ロードバイクについて、批判を恐れず、筆者のこだわりと理想をとことん突きつめた問題作。自転車屋のオヤジが多かれ少なかれ持っている、職人気質と偏屈さの魅力を十分に味わえる(オイラは自転車オヤジのマニアックなウンチク話が好きだ)。少々古くはなっているが、また読み直そうと思った一冊。