第27回高知県高等学校演劇祭 その3


 上演4 土佐高等学校・ひまわり作「かえるハイツ」


 高校生3人と大学生ひとりの女子四人が集う家。大学生の女子がひとり暮らしを始めることで、四人の心にさざなみが立つ様子を描いた会話劇。


 台本について。生き生きとした日常的な等身大の女子の会話がとてもいい。勢いがある。友達同士の楽しげな感じが伝わってくる。セリフはきちんとかみ合っているし、よく考えられて書いてある。「こころちゃんの部屋は絵の具の匂いするね」など、はっとさせる印象的なセリフも多い。四人がなぜこのアパートで暮らしているのかよくわからないなど、四人の詳しい状況設定がほとんど描かれていない点に、書ききれていない感があるが、春めいた「いま−ここ」の瞬間をきちんとすくいとった書きぶりには好感が持てた。実はオイラの勤務校で上演してみたいと正直思った。お世辞ではありません。


 だが実際の舞台は、セリフなど、演技が少々荒くて単調だと思う。セリフが早く、プレゼントを贈る、ケーキを食べるなどの、芝居の中で起こるイベントも、あっという間に過ぎていく。もう少し間を取ったり、リアクションを丁寧に仕込んだり、テンポに緩急をつけたりすれば、ひとつひとつのイベントが、いろいろな意味を持った「事件」に変わったかもしれない。また役者は観客をもう少し意識すること。観客側に視線を送り、観客を四人の関係の中に感情移入させていくたくらみが欲しかった。


 セットは、平台で、部屋と部屋前の廊下を表現していた。部屋奥の壁は、建てられたパネルで分かるが、部屋と廊下の間の壁やドアが省略されているために、観客には廊下と部屋の間の壁がなかなか見えてこない。また、土佐高だけでなく、他の演劇部もそうなのだが、高知の高校演劇の人たちは、平台にケコミ板を貼らない。総合的に見て、演技とのバランスにおいても、必要なセットが舞台の上に揃っていないように思われた。


 終盤、大学生女子が去り、残されたうちのひとりが、残された者の寂しい気持ちを吐露する場面がある。そのことをもうひとりが「わがままだ」といい、「しようがない」という人との間にさざなみが立つ。わがままを必要以上に抑えて生きている、今の健気な高校生のありようと重なる葛藤には心を動かされるが、それでもドラマのポイントとなる対立・葛藤としては弱いと思う。少しばかり自分の心情を言い合って、ケーキ食べて花見したら、ちょっぴりすっきりした、程度の葛藤なら、それは軽すぎないか。それにお互いの思いが言葉で説明されるだけで、出来事による登場人物の変容が見られない。対話が観念的で生硬なディスカッションに思え、その点は物足りなさが正直残った。