前山亜杜武「スゴい人の法則」フォレスト出版 西沢泰生「大切なことに気づかせてくれる33の物語と90の名言」かんき出版


スゴい人の法則

スゴい人の法則

大切なことに気づかせてくれる33の物語と90の名言

大切なことに気づかせてくれる33の物語と90の名言


 (さらに一部手を入れました/2013.10.11)


 オイラの勤務校の高校では、毎朝15分のスキマ時間に、生徒が「格言・名言を書き写す」という硬筆書写をやっていて、その課題は年度当初から、なぜかオイラが作っている。


 今日も、生徒の書きうつす硬筆書写のシートを作る。参考にするのは、名言・格言の入った自己啓発本。今週は「スゴい人の法則」と「大切なことに気づかせてくれる33の物語と90の名言」からヒントをもらう。


 硬筆書写の手本を書くまでは、この手の自己啓発本と言えば「うさんくさい」というイメージがあった。有名人の経験に基づくヨタ話の羅列か、近視眼的な「夢」や「成功」を称揚するお手軽な金もうけ、ぐらいに思っていた。


 だが読んでみると、書いてあることは、至極まっとうなことで、いちいち納得できることが多く、「スゴい人」の生き方に触れたり、「大切なこと」に気付かせてくれたり、図らずもオイラ自身が触発されていることに気付く。


 「片足がなくなって、本当によかった」と言う、パラリンピックアルペンスキー選手の田中哲也さん、自分に勝った選手を観察して、「きれいな心」を発見したという空手家の塚本徳臣さん(ともに「スゴい人の法則」)。「ふつうのことこそすばらしい」「私たちはすでに持っている」と説く西沢泰生さん。蘊蓄のある言葉や生き方に、フムフムとうなずかされることも多い。


 この手の本はコンビニにも売っていて、あっという間に読めてしまう。軽い時間つぶしという感覚でも読まれることが多いのだろう。自分の考えを深めたり、思索するきっかけや入口になることもあるかも知れないから、そうした点では存在意義があると思う。


 ただ、真理にいたるプロセスがお手軽なのは、つまらない。山を登る苦しみがあるからこそ、頂上に達したときの喜びは大きいというもの。薄い本を一冊読んで、何となく人生がわかったような気分になるより、ちゃんと悩んで、読み応えのある古典を読んだ方が、その人の人生は充実したものになると思うのだ。だから、昨日のエントリーで書いた「パリ20区、僕たちのクラス」の「反抗的な彼女」がプラトンの「国家」を読むという教育的成果には、とても意味がある。安直な言葉や癒しこそ、私たちは警戒しなければならない。


 ただ、オイラも、教育という名の下に、これらの本を参考に、教材を作ろうとしているわけで、自分が安直なプロセスを踏んでいることに、後ろめたさを感じる。口当たりのいいだけのコンテンツにならないように、自戒したいと思う。