内田樹×高橋源一郎「原発再稼動再稼動が日本を滅ぼす」SIGHT2013年秋号



 10/6のエントリーでも触れたように、オイラの勤務校の高校では、毎朝15分のスキマ時間に、生徒が「格言・名言を書き写す」という硬筆書写をやっていて、その課題は年度当初から、国語の教師でも書道の教師でもないのに、なぜかオイラが作っている。


 今回は、雑誌SIGHT2013年秋号「原発再稼動再稼動が日本を滅ぼす」の、「総論対談/内田樹×高橋源一郎」からの引用をもとに、高校生向けの教材を作ってみた。


 最初にコトバ。これを二度書き写す。そして、解説のところを読んで、理解を深める。これが15分間のルールである。


 「1964年の東京オリンピックは、文字通り「平和の祭典」だったと思うんだ」   内田樹


[解説]
 「オリンピックと商業主義」を書いた小川勝氏によると、1908年に行われたロンドンオリンピックにかかった経費は、1万5214ポンド。これに対し、2012年のロンドンオリンピックの経費は、93億ポンド。物価上昇率を差し引いても、100年のうちに、オリンピックは、莫大な金のかかる商業的イベントになってしまいました。


 今回の東京オリンピック招致の経済波及効果は3兆円とか150兆円とか、招致の話になると、出てくるのは、カネの話です。「街場の教育論」などの著書で有名な評論家の内田樹(うちだ たつる)先生は、オリンピックの原点は平和の祭典、今そのことをみんな忘れている、と言います。内田樹さんの言葉を借りながら、今日はそのことにもう少し深く触れてみましょう。


 1964年の東京オリンピックのときの話です。1960年代前半と言えば、東西冷戦の真っただ中。キューバ危機(1962)が起こり、世界は核戦争で滅んでしまうのではないかという気分が蔓延していました。キューブリックの「博士の異常な愛情」や、スタンリー・クレイマー渚にて」など、核戦争の恐怖を描いた映画がたくさん作られた頃でもありました。


 東京オリンピックはそのころ行なわれました。とくに閉会式、各国の選手がグチャグチャに入り乱れて、抱き合ったり肩を組んだりして行進しました。こうしたスタイルの閉会式は、東京がはじめてだったそうです。


 内田樹さんは、この閉会式を見て「思わず涙が出そうになった」といいます。オリンピックが「核戦争に対する「世界平和」の明るいイメージを見せてくれたからです。「日本はなんとか戦災から復興して、これだけ平和な国になりました。でも、世界のあちこちでは、まだ戦争をしている。みんな、戦争をやめて平和に暮らしましょうっていう、けなげなメッセージを一生懸命発信」していたのです。


 お金の話は二の次でした、あのときの日本人は世界中から来る人を歓待しようと本気で思っていたと、内田樹さんは言います。だからそれが人々の心に強く残ったのではないでしょうか。


 さて、2020年の東京オリンピックでは、日本は、どんなメッセージを発信するべきなのでしょうか。そして私たちは、どんなイメージを感じるでしょうか。お金のことばかりでいいのでしょうか。皆さんの想像力で、ぜひ7年後の未来を思い描いてみてください。


 (内田樹×高橋源一郎原発再稼動再稼動が日本を滅ぼす」SIGHT2013年秋号より引用しました)



オリンピックと商業主義 (集英社新書)

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